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がん予防・再発防止「腎機能」悪化予防としての、「LDLアフェレーシス治療」

「透析」を回避するために・・・

現在、わが国では高血圧の患者さんが約1000万人、糖尿病の患者さんが約950万人いるといわれており、生活習慣の改善や継続的な投薬治療を受けています。この中には、腎臓の機能障害を合併することがあり、この場合多くが血液透析を受けることになります。この数は、30万人以上にものぼり全国民の400分の1が透析加療を受けていることになります。

一般人に比べ透析患者の平均余命は約半分と短く、生活も大幅な制限を余儀なくされます。透析を回避するために、積極的な予防治療としてのLDLアフェレーシスについて説明します。

腎臓の大切さ

アフェレーシス(血液浄化療法)は、消化器疾患・肝疾患・循環器疾患・膠原病などで保険適用治療としてその有用性が認められている治療であり、当クリニックではがんを含む種々の病気を防ぐ予防医療(自由診療)として行っています。
私たちの血管内には、脂質代謝異常の原因となる中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロール、炎症物質、がんの原因となるウイルスなど、さまざまな病気の原因となる老廃物が巡っています。このアフェレーシスは、直接がん細胞を攻撃する治療ではなく、そういった老廃物を血管内から取り除いて、健康状態の改善を図る治療法です。
治療は、まず血液を1次フィルターに通して、「血球」と「血漿」に分離させます。次に、LDLコレステロールや中性脂肪などの分子量が大きい病因物質を含む「血漿」を2次フィルターに送ります。2次フィルターでは特殊な膜によって病因物質を濾過(分離・除去)します。最後に、浄化された血漿と血球を体内に戻します。

毛細血管が老化して機能しなくなる「ゴースト血管」になってしまうと、免疫細胞が血管に入りづらくなり、がん細胞が増殖しやすくなるといった報告もあります。血液を浄化し、血管内を健康に保つことは血管老化を防ぐことにもなります。

腎機能悪化予防としてのLDLアフェレーシス治療の根拠

2020年現在日本においてLDLアフェレーシス治療(LDL-A)は、家族性高コレステロール血症、閉塞性動脈硬化症、巣状糸球体硬化症(FGS)、全身性エリテマトーシスなどに保険適応があります。

FGSについては、

1992年の酒井先生らの論文(1)などにより、腎機能改善に効果があるため保険として認められて来た経緯があります。また特に糖尿病では脂質産生亢進、酸化型LDLの腎臓への蓄積、マクロファージの腎臓への浸潤と活性化、炎症性サイトカインの産生、活性酸素産生亢進、糸球体基底膜透過性亢進での尿たんぱく増加などがおこるといわれており、糖尿病性腎症の原因となっているため、それらに対してのLDL-Aの効果も期待できるといわれております。

また、FGSやFGS以外の腎疾患への効果として

(2)膜性腎症の重症度の高い方に対してアフェレーシスを併用することで軽症者と同じレベルまでに回復させられる
(3)後向き研究でFGSに対しステロイドでの加療より、LDL―A併用法が尿たんぱく減少効果が高かった
(4)前向き研究で薬剤抵抗性ネフローゼ症候群(FGSもFGS以外も)に対し効果があったなど、巣状糸球体硬化症以外の慢性腎炎などにも効果が言われています。

また、糖尿病性腎症への効果として

(5)糖尿病性の腎障害(高度尿たんぱく症例)に対し6回のLDL-Aで改善効果を認め、その後も一定期間維持できた。
(6)糖尿病性腎症18名を2群にわけ治療したところ、LDL-A群のほうが尿たんぱく、腎機能に対し著名な改善(尿蛋白10.8g→1.8g、Cr1.8→1.2)
(7)糖尿病性腎症患者へのLDL-A治療(6-12回)の腎臓予後調査。2年後3年後に腎機能予後に有意差あり

などが報告されており、腎不全透析導入などを回避したり遅らせることのできる効果が報告されつつあります。

LDL-Aが尿蛋白減少や腎機能改善効果を示す理由としては以下のものが考えられます。

① 脂質(特に酸化LDL)低下作用、抗炎症作用、腎臓へのマクロファージ浸潤抑制作用などで、腎臓組織障害を抑制
② 血流改善作用、プラーク安定化退縮作用、抗炎症作用により、腎臓血管系への良好な効果
③ 肝臓などのLDL receptorが腎機能改善薬(ステロイド、免疫抑制剤など)などの作用機序に関与しており、LDLを取り除くことでreceptorに作用でき薬効が改善する
④ HDL(いわゆる善玉コレステロール)は低下させないため、HDLの働きでマクロファージのLDL引き抜きが進み、マクロファージによる糸球体への浸潤が抑制される。

このような効果がLDL-Aに見られるため、保険では認められてはいませんが、慢性腎炎や糖尿病などからの腎不全を抑制できる効果が期待できます。

脂肪由来幹細胞培養上清の腎不全への効果

幹細胞が、体内で炎症などがある部位にあつまり、その組織の回復に働くといわれており、ます。また同じような効果が脂肪由来の幹細胞の培養上清にも報告されており(9)、LDL-Aとの併用で、より腎機能悪化予防に貢献できると考えます。右図・LASCを急速進行性腎炎ラットモデルに投与し、腎障害が大幅に改善することを報告(9)

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